読んだ本などを不定期に紹介します

 

 

 

2011年07月02日 00:28
ブルーインパルス 大空を駆けるサムライたち
2011
文藝春秋
武田頼政

1979年11月14日、浜松基地航空祭で演技中に墜落した4番機、高嶋潔氏の文字通り命をかけた生き様と、残された者たちの思いを中心に、関係者各位が航空自衛隊を退官するまで待って取材を敢行した労作。
わたしは、著者が編集に携わったという在籍した航空ジャーナル誌の熱心な読者でもあり、1982年8月にT-2ブルーインパルスのデビュー二回目の演技を青空の千歳基地で見ている。当時、高校卒業後、モラトリアム期にあったわたしにとって、この事故の映像と記事は大きな衝撃であった。
この事故の前、部隊内でのできごと、人事のひずみ、不条理きわまりないことの数々。組織人のぶつかる壁。それらを飲み込んで飛び続ける人々。
事情聴取に際し、建前と本音のつじつま合わせをパイロット達に強いる人たちへの怒り、実際にT-2に同乗してアクロバット飛行を体験し事故原因究明にかける担当検事の、真相に迫ろうとする真摯な態度への尊敬、負傷した子供の親の敬服すべき態度、事故後の高嶋氏の親族の方々の生き様。
学ぶべきことはたくさんある。
飛行教導隊でのT-2の事故の原因については、驚かされる。T-2、F-1が全機退役したいまだから書けることだろう。
ブルーインパルス黎明期の逸話は楽しい話もある。このチームの名称には日本人が忘れてはいけないことが含まれていること、チームの長い歴史の中での晴れ舞台、その逆に関係者の目に見えない葛藤など、外部からの想像を超えたエピソードが多い。
組織にいる以上、思いどおりにならない不条理を感じることはあるが、そこに命を賭けられるか。そこに命を賭けた人達がいる。自分ならどうするかと考える場面がたくさんあった。

 

2011年01月31日 01:53
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
2009
ダイヤモンド社
岩崎 夏海

着眼点の勝利だと思います。もし〜だったら、というストーリーをうまく展開させていると思います。名著を一般に対して知らしめる効果があり、それでいて嫌みはない。おすすめです。

 

2009年01月17日 23:40
川の深さは
2003
講談社
福井 晴敏

物語前段、主人公桃山の目的を失った怠惰な生活とその根底に流れる気持ちに共感でき、人物像に深みを持たせている。金谷が彼に感じる恩とそのきっかけのエピソードも然り。日常に埋没していてもいざというときには、かくありたいという気持ちになれる。
後半のアクション部分は「それはあり得ないだろ」、と突っ込みを入れたくなる展開が満載だが、それはそれとして楽しんで読み進めることができる。ヒーローはこれくらい不死身でなければ。その点、保の消息が消えてしまったのはあっけなかった。登場人物に成りかわった筆致が、ぐいぐいと引き込んでいく気がした。
涼子の人間像は男性から見ると魅力的だが、女性の視点ではどうだろうか、このような心理になると思えるかな、と感じた。
読後感は心地よい作品。

 

2010年01月14日 01:352
ロシア 語られない戦争 チェチェンゲリラ従軍記 (アスキー新書 71)
2009
日本放送出版協会
勝間和代, 藤巻幸夫

書籍は出会いだと思います。だいたい、タイトルで手にとって見た本を買います。今回もそうでした。
藤巻さんの「巻き込み」という言葉は、自分の思想を周りに広めていかなければならないと感じているわたしには大いに共感できるものでした。
勝間さんの著作も読んだことがなかったので、プレゼンの仕方を教わらなかったことで遠回りしたと自覚するや、会社にそれを標準化するよう提案するなど、これと思ったことはすぐに発言、実行に結びつけることが美徳だと思いました。Not To Do Listのすすめも、いいかもしれない。

 

2008年10月03日 01:52
ロシア 語られない戦争 チェチェンゲリラ従軍記 (アスキー新書 71)
1999
講談社
福井 晴敏

最初、登場人物紹介を見て、多すぎる、と思ったのだが、それぞれの立場と背景を浮かび上がらせる描写がたっぷりで、事件が起きてからの展開のなかで、彼らの言葉や行動に、意味を感じる。どうなるのかな、と思いながら読み進めたところで、思いも寄らない展開があって、物語に引き込まれた。
設定に無理を感じる部分は少なく、平時の護衛艦の艦内生活、海の男たちの家族との絆は、このようなものなのだろうと想像できる。
物語の中で繰り出される台詞に作者の人間的深みを感じる。
こういう作品は、どのように組み立てられるのだろう。才能ある人間の大きな仕事をみせていただいた。
フィクション作品もいいものだ。

 

2008年08月08日 02:44
ロシア 語られない戦争 チェチェンゲリラ従軍記 (アスキー新書 71)
2008
常岡浩介
アスキー・メディアワークス

チェチェンの武装組織に同行し、彼らの視点でロシアと被支配民であるチェチェン、イングーシ、その他の民族の悲哀に満ちた現状を書いたもの。グルジアの苦悩も感じられた。
ヘリからミサイルを放たれ、拘束され、しかし、日本人であるが故、尋問されたものの数々の幸運が重なり危害を加えられず生還したこと、その真実の体験をまとめて出版するという危険な行為に著者のジャーナリスト魂、信念を感じる。
北オセチア、ベスランでの学校占拠事件に対するくだりは、世論誘導のためにあえて非合法行為を自作自演している国家があるのではないか、とその罪を告発している。
重い内容だが、その戦禍から離れた日本にいるからこそ、この現実を受け入れ、彼らに思いを馳せる時間を持ちたいと思った。

 

2007年08月09日 00:48
石ころのうた
1979
角川書店
三浦綾子

三浦綾子さんの自伝。女学校に入った頃から小学校教諭になり、終戦時の墨塗り教科書を経験して虚無におちいるまでのことが描かれている。どこまでも自分を客観視している文章が冷徹。だれしも触れたくない過去はあると思うが、その暗部をさらけ出す勇気に感服した。普通のひとは自分のことをここまでは書けない。三浦さんの作品の深みがこの体験から来ていることに気付く。たくさんの重要な出会いがあるのは、彼女の人徳だろうか。

 

2007年01月24日 00:09
ナイト・オブ・ザ・スカイ
2006
ジェラール・ピレス
ブノワ・マジメル, ブノワ・マジメル, ジェラルディン・ペラス, クロヴィス・コルニアック, アリス・タグリオーニ

CGを極力廃し、カット割りの少ないた撮影のおかげで臨場感のある戦闘機の飛行シーンが楽しめる。
ストーリーとしてはこんなものか!というところ。
銃の発射音が本物っぽいところと人があっさり殺されるところが日米の映画と違う。非常にドライ。
しっくりしない終わり方はフランス映画にありがち。
飛行機好きにとっては楽しい映像満載です。

 


2006年12月05日 01:22
戦話・大空のサムライ―可能性に挑戦し征服する極意
2003
光人社
坂井三郎

戦後、早い時期にその空戦記で有名になった著者の昭和56年頃の著作。大戦時のエピソードの生き生きとした描写は他の著作に譲るが、ときを経て冷静な目で書かれた考えは本書は現代に通じる生き方、ものの考え方の指南書たり得る。人生是勝負という作者の言葉は日々の励みになる。飛行機や戦争のことを知らない方、他の著作を読んでいない方にもお勧めできる。

 

2006年07月14日 23:30
たそがれゆく日米同盟―ニッポンFSXを撃て
2006
新潮社
手嶋龍一

ウルトラ・ダラーの書評を読んで著者に注目していた。期待に違わぬ濃い内容で、沢山のニュースソースから得た情報で構成され適当な記述は感じられない。1980年代末の当時の次期支援戦闘機(現在の三菱F-2)誕生前の日米の政治状況、特に米国上院の内幕は、実際に現場で見聞きした者でなければ描けないと思われる。ビル・ブラッドレー、松永信雄といった登場人物に強く惹かれた。軍事的には同盟関係を堅持している2国が経済、政治的にどのようなバランスのなかで付き合っているのかよくわかり、一線の方々の労苦が忍ばれる。
初版年から日が経っていることでかえって客観的に読み進めることができる。

 

2006年02月25日 20:59
カルロス・ゴーン経営を語る
2005
日本経済新聞社
Philippe Ri`es, Carlos Ghosn, カルロス ゴーン, 高野 優, フィリップ リエス

フランス人ではないけれど、フランス語圏からエリート校へ進んだ道のり、ミシュランに見いだされ修行を積んだ若年期、ルノーのシュバイツアーに抜擢されルノーを立て直す過程、そしてご存じ日産自動車への派遣から最初の三年間を語った本。
非常に硬直した組織だったルノーを再生したくだりが、示唆に富んでいます。生い立ち、家族についての考えも彼の人となりを感じさせる。巡り合わせで過去の経験を生かすべきときが突然やってくること。組織のなかで改善を実現するために他人に対してどう働きかけたらよいのか、参考になります。


 



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